【SPR通信8号】 新製品開発の成功を左右していく社内の優秀な人材以上に重要なこと
日経エレクトロニクスの5月号にTOTO株式会社の半導体分野でのセラミックスについての記事が掲載されています。以前、同じ業界の会社で同じ分野向けにセラミックス製品を開発していた私にとっては、同社の技術力に対しての尊敬の念を抱くとともに、競合としての悔しい思いも半分はあります。同誌は有名な半導体業界、半導体装置を取り扱う記事がほとんどであり、素人の私の情報源の一つです。そこに素材メーカーとしてセラミックス製品取り上げられていることはあまり前例はありません。(過去の記事のことは詳しくは調べていませんが…)
先日、中小企業診断士の研修会があり、そこでTOTOに勤務されている方と少し話す機会があったのでその記事のことを話すと、雑誌や話題自体が極めてニッチなことなので、私がその記事を知っていたことに驚かれるとともに、「あそこまでくるのにとても長い年月がかかりました」と当たり前のことを笑みを浮かべて言ってました。(記事には40年との記載あり)。
半導体業界という成長産業向けの製品を同社の過去から蓄積された独自の技術でもって製品開発に成功したということまでは誰でも解釈できるけど、たぶん現TOTOの方も覚えている方は少ないと思いますが、35年前に大学での隣の研究室出身の2つ下の後輩が同社の研究部門で製品の原料レベルからの基礎研究を私の出身研究室の助教授(現准教授)と共同でやっていました。そのような自社のコア技術をさらなる深堀を会社として許容していたことも同製品開発に寄与したのかな?というのが、名もない素材技術者の一人としての私の考えです。当時の時代と現在と違いますが、ほとんどの会社は技術の基礎をさらに高めていくテーマは、売上からほど遠いという理由であまりやりたがりません。でもその部分から見えないところで技術の根を張ってやがて別のところから新しい芽がでてくるという原理は植物と変わらないと思います。このような仕組みが会社にあればいつの時代でも会社は成長していきます。